歯科コラム

歯槽膿漏は、歯周病が進行した状態を指します。

歯ぐきの腫れや出血、口臭、歯のぐらつきなどが見られ、放置すると歯を支える骨（歯槽骨）が溶けてしまい、最終的には抜歯に至ることもある病気です。

この病気の特徴は、“ゆっくり進行する慢性疾患”であること。

そのため、短期間の治療だけでは本質的な改善に至らないケースがほとんどです。

「一度で全部治してほしい」と希望される方もいらっしゃいますが、歯槽膿漏の治療は、たとえ重度であっても“段階的な処置”が必要になります。

主な理由は以下の通りです

• 炎症の程度や範囲は部位ごとに異なり、全体を一気に治療するのは身体への負担が大きい

• 歯ぐきの状態は治療ごとに変化するため、定期的なチェックと調整が欠かせない

• 治療と同時にセルフケア（歯みがき）も改善する必要があるため、習慣づくりにも時間が必要

また、歯周病菌は環境が整えばすぐに再増殖してしまうため、治療と並行して継続的な管理（SPT）が重要となります。

当院では、歯槽膿漏の治療を以下のような流れで行っています。

1. 歯周ポケットの検査

　どの部位でどの程度進行しているかを数値で確認。

2. スケーリング・ルートプレーニング

　歯の表面や歯ぐきの奥の歯石・細菌の除去。回数を分けて丁寧に行います。

3. 必要に応じた外科的処置

　深いポケットが残る場合は、外科的に処置することもあります。

4. メインテナンス（SPT）

　治療後も定期的にチェックとクリーニングを行い、再発を防ぎます。

このように、治療は“点”ではなく“線”で考える必要があり、治療後の継続的なケアこそが成功のカギです。

歯槽膿漏の治療は、症状がひどいほど「早く治したい」という気持ちになりますが、焦らずじっくり向き合うことが大切です。実際、治療を急ぎすぎたことで炎症が十分に落ち着かず、かえって治りが悪くなったり、再発が早くなるケースもあります。

大切なのは、「改善する流れ」を止めないこと。

治療→経過観察→メンテナンスという一連の流れを、歯科と二人三脚で続けていくことが、歯を守る最善策です。